夕食はボランティアさんの手で

夕食は有償のボランティアさんが、自宅でつくって届けてくれます。ボランティアさんが都合でできないときには、チーフ役や私がっくります。ボランティアさんには、入居者一人につき五百円の材料費、六人分で三千円を払い、一時間七百円の謝礼をしています。
シチュー、おでんなどの時聞をかけてじっくり煮込んだものには、一時間三十分を目安に千円をお支払いします。但し光熱費はカンパということで、少々気が引けています。
夕食をボランティアさんに頼むことにしたのは、ちょっとした思いつきでした。私の子供の保育園、小中学校の同級生のおかあさんたち、いまでも大切な私の友人達ですが、その中にはご主人が地方へ単身赴任で行っている人がいて、その人達が何かの集まりの折、
「カレーを一人二人分つくってもおいしくないし、てんぷらもこの頃は出来合いばかり、精進揚げなんか少しずつでも何種類か揚げると食べきれないし、今度てんぷら揚げる時、ついでに『さくら』の分もつくって上げるわよ」
といっていたのを思い出して、早速頼んだのが夕食ボランティアの始まりです。夕食時間は、いつの間にか年聞を通して午後六時半から七時半頃までとなりました。この時間になるとみんな食堂に集まってきます。三日交代の炊事当番が炊いたご飯と味噌汁、そして、ボランティアさんのつくってくれたおかずと裏の畑でとれたほうれん草のおひたし、こまつなの胡麻和え、キュウリと茄子のお漬物、トマトサラダ、それとたいていの場合、炊事部長お手製の料理が一品テーブルに並びます。
これが日常的な「さくら」の食卓風景です。ところが、みんなが相撲が好きなものですから、場所が始まると少し様子が変わります。五時をす、ぎる頃から一人、また一人と食堂に集まり始め、お茶をいれてテレビで相撲を観戦し、勝った負けたと言いながら準備が整うのを待ちます。もちろん、全員があれこれと手伝います。

七時半が回りみんな食事が終わると、それぞれ同じように後かたずけをして、洗い物は炊事当番にまかせ三々五々部屋へ帰ります。それから風呂に入りたい人は順番で入ります。風呂も他のことと同じように、「さくら」での生活は、すべて基本精神の「自主独立」で、私や他の誰かが強制するようなことはありません。風呂の順番も、食事をしながら話し合って、自然に決まってしまいます。世間のどこの家庭でもみられる日常生活の一こまです。
二年ほど前、二十四時間風呂(最近、その効能がいろいろいわれている)を据え付けてみましたが、明るいうちは誰も入る気がしないようで、ほとんど役にたちません。私としては、夜になればやれ時代劇だ、歌謡ショウだといってテレビにかじりついて効率よく入ってくれず、電気代もかさんでいい顔ばかりもしていられないということもありますが、何度でも入れて健康にもいいのではないかと考え、思い切っていれてみたのですが。

夕食は毎日、ボランティアさんがつくってきてくれることは述べましたが、時にはボランティアさんの都合でつくってもらえないこともあります。そんな時には、自分達で話し合って好きなものをつくります。
「やっぱり揚げたてはおいしいよね」など連発しながら、さつまいもや、野菜のてんぷらを揚げたり、鍋物をつくってニコニコしながら食べます。こんなところはやはり女性ならではです。
それでも、毎日食事を自分達でつくるのは、神経も使うし体も疲れていやだとみんないいます。私は以前、ある市民団体が市内の七十五歳以上のおとしよりを対象に行ったアンケートを見たことがありますが、それによると、七十歳以上になれば女性でも毎日三度の食事をつくることは、面倒で億劫という意見が多数を占めていることを知りました。「食事つくりは主婦の仕事」、が当然のような今の社会の認識には、最近の女性達も時には抵抗しても、なかなか抜け出せないのも現実のようです。
そんな状況の中で、「さくら」でもたまの旅行の時など、宿で上げ膳据え膳でもてなされると、それだけでもうおお喜びです。こんなことに、なんともうれしい解放感を味わうのが女性の実感ではないでしょうか。「さくら」のようなグループハウスでも、毎日食事を三食すべて自分達の手でつくるのは、私は無理だと思っています。

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