けんかもできるうちが花

何といっても生まれも育ちも異なり、その上、何十年と違った人生を歩いてきた人たちが一つ屋根の下で生活するのですから、考えや意見のくい違いで時にはけんかがあっても当然、なかったら嘘だと思います。夫婦や嫁姑、血を分けた親子や兄弟でも、時には意見の違いや言い合いがあっても不思議ではありません。ところが、そこはやはり大人の世界です、
「さくら」でも、他人同志が縁あって共同生活を始めたのですから、多少のいざこざはあってもまずは我慢と、それぞれうまくやっていてけんかはごく希です。
それでも、不満や意見があれば腹にためずに口に出すことと、月二回はミーティングをもち、そこではどんなに些細なことでも、どんどん口に出すよう私はみんなにすすめています。
例えば、食事の時の席のことなど。毎日同じ場所に座ると、お釜のそばに座った人はいつもご飯をよそう役になります。ポットのそばに座った人はお茶のいれ役になります。また、テレビが見やすい場所のことが問題になったこともあります。そのときは、早速ミーティングで話し合い、一カ月ごとに席を代わることになりました。一見とるに足らないことのようにも思われますが、共同生活では、小さなことをおざなりにせずまめに対応することが、和を保つためにもっとも大切なことと実感しています。
時に感情の行き違いや意見の相違は、共同生活では避けられないことでしょう。ですから「さくら」でも、たまにはちょっとした口争いなどは起こります。ミーティングは、そうした日常の感情や意見の行き違いを調整をして、その原因をお互いが気づくためにも欠かせないと私は考えています。

縁あって共同生活はしているものの、生まれも育ちも違う他人同志の集まり、お互い気の合わない人もおります。例えは悪いかも知れませんが、昔から「犬猿の仲」などという言葉もあるように、「さくら」でも気の合う人と合わない人があります。
一方が何かを言ったり行動をおこすと、それが気になるらしく、すぐに言い合いになることがあります。ほとんどのことが、周りの人は聞いていて思わず吹き出してしまうようなたわいもないことなのですが、当人たちは結構真剣なのです。
こんなとき私は、いつも黙って様子を見ることにしています。すると、やがてどちらからともなく黙ってしまいます。お互いそんなに嫌ならここを出て好きに暮らせばいいのに、と時には思ったりもしますが、さりとてこの二人、ここを出て生活することなどとても考えられないようです。協調性がなくては、どこへ行っても苦労は見えています。そしてときには、
「やきもち、ひがみはそろそろ卒業しなさいよ。つまらないことに気を使うと長生きできないよ」などと因果を言い含める長老も現れます。これこそ、十人十色の共同生活ならではの味わいでしょう。
「それをいっちゃあ、おしまいよ……」これは映画寅さんの名せりふですが、私の頭の中には、時々、このせりふが浮かんで来ます。二人は犬猿の仲のようだけど、それが良い方に働いて「今度は言われないようにしなくちゃ」、「きちんとやらなくては」と反省の機会になれば、けんかも若さを保つ秘訣と思います。
「けんかもできるうちが花、出来なくなればおしまいよ」大いに楽しんでください。

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