資金の調達と設計依頼

前にも述べましたように、私はわが家の建て替えに合わせて、高齢者との共生の家を建設しようと考えていましたので、建物は三階にしてその中に私たち家族五人の生活スペースと、ほかに数人の入居者が共同生活をする場をと考えていました。
それも、私がこれまで頭に描いてきたグループハウス――ぜいたくなものでなく、普通の人が、共同生活をしながら安心して老後を過ごすことが出来る家、そんな家をつくりたい、という夢がようやく歩みだすことになりました。
いよいよ銀行と資金繰りの交渉を持ったのです。今、その時のことを振り返ってみます
と、随分無茶なことをやったものと苦笑いもでます。何しろ、夫は一介のサラリーマン、銀行取引といっても給与の振込と公共料金の引き落とし、それに多少の預金――せいぜい頭金くらい――しかありません。
このくらいの規模の家を新築すると小川家のローンの返済は月額二十五万円から三十万円は覚悟しなければ、それと入居者からの家賃三十万と合わせて毎月六十万円の返済で、銀行はいくら貸してくれるか。何しろ貧しい資金でのスタートなので、返済計画、運営資金、と頭の中がパニック状態で眠られない夜も幾度かありました。
それでも、どうにか厳しい返済計画もとおり、土地と建物を担保に予定額の借り入れに成功しました。私たちが共働きで、一定額の年収があったこと、それに、当時はバブル経済華やかなりし噴だったこともプラスしたようです。
こうしてようやく建設資金の目処もたち、工事に着工したわけですが、実はその後、あまりの高金利――さいごに借りたお金の金利は八・四%でした――に悲鳴を上げ、夫の兄の遺産相続で引き継いだマンションを処分して返済に当てるという苦労もありました。それでも、とにかく設計士さんに設計の依頼をするところまでこぎつけることが出来ました。

スエーデンのグループホームがよくても、事情の異なる日本で同じものをつくることも出来ません。気候風土や、社会情勢にも配慮し、私の力の及ぶ範囲でのグループハウスをと、設計士さんにお願いしました。
二百十九平方メートルの敷地に、私たち家族のための四部屋と居間とキッチン、そして、風呂場、トイレなどの生活スペースを。それと入居者のためには、どんなに小さな部屋でも、プライバシーが守れる個室で、それぞれにトイレと洗面所と空調設備は絶対必要です。
共有のスペースには、台所、食堂、畳一畳の堀ごたつを備えたリビング、風呂場、などを。それに各室にはコールベルをつけ、玄関の床には二百個のビー玉を――玄関に朝日が差し込むと、埋め込んだ赤や黄や緑のビー玉が、まるで虹のように美しく輝きます――埋め込んで欲しい。などなど、数え切れないほどたくさん条件をつけてお願いしました。
設計士さんは、これまでマンションやアパートの設計を数多く手がけてこられたベテランですが、何しろ、限られた費用の割には注文が多く、グループハウスも初めてと随分びっくりされたり苦労されたことでしょう。
水回りはどんなに小さくても柱四本で、しっかりつくらなくては……でも費用がかかりすぎる、トイレは共同では……などなど、しばしば変更の相談を受けることになりました。それでも私は、トイレは絶対各部屋にとゆずりませんでした。トイレのことでは、トラブルが多いことを知っていたからです。具合が悪いとき、熱があっても這ってでも行けるトイレはおとしよりにはぜったい欠かせないのです。
また、建設業者の選定については、私が十六年にわたり市議会議員をやっていた関係で、地元の業者をたくさん知っていました。しかし、自分の考えをしっかり実行したいとの考えで、信頼している設計士さんに選定を一任しました。その結果、建設業者の入札には、銀行推薦も加わり四社で行われましたが、この程度の建築でも上下で千二百万円の聞きがあったのには驚きました。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

コメントは利用できません。

2019年10月
« 12月    
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

関連記事

  1. 資金の調達と設計依頼

    前にも述べましたように、私はわが家の建て替えに合わせて、高齢者との共生の家を建設しようと考えていまし…
  2. 国の「高齢者グループリビング支援モデル事業」の第一号に-問い合わせ電話殺到!

    「さくら」が厚生省の「高齢者グループリビング支援モデル」の第一号に指定されてから、急に周りがにぎやか…
  3. 一人暮らしと共同生活

    佐藤久良子(七十九歳) オーナーの小川さんからグループハウスの話を聞き、入居のさそいがかけられたの…
  4. あとがき

    一九九七年六月、母の十三回忌法要のため、姉兄妹で函館に行ってきました。祖母が昔流の願掛けお百度詣りの…

ピックアップ記事

  1. けんかもできるうちが花

    何といっても生まれも育ちも異なり、その上、何十年と違った人生を歩いてきた人たちが一つ屋根の下で生活す…
  2. あとがき

    一九九七年六月、母の十三回忌法要のため、姉兄妹で函館に行ってきました。祖母が昔流の願掛けお百度詣りの…
  3. 国の「高齢者グループリビング支援モデル事業」の第一号に-問い合わせ電話殺到!

    「さくら」が厚生省の「高齢者グループリビング支援モデル」の第一号に指定されてから、急に周りがにぎやか…
  4. 一人暮らしと共同生活

    佐藤久良子(七十九歳) オーナーの小川さんからグループハウスの話を聞き、入居のさそいがかけられたの…
  5. グループハウス「さくら」の誕生-粗末な現状に奮起

    私は、長く行政に関わってきた経験(浦和市議会議員)から、行政は必要と思うことでもすぐに実行に移せるも…
  6. Tさんに一本とられたこと

    洗濯機の音が二、三目前からおかしいと思っていたところ、ついにガクンといったまま動かなくなってしまいま…
ページ上部へ戻る