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- あんたがポックリいったら……――「さくら」ができるまで
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六人の入居募集に六十四人の応募
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工事もいよいよ終わりに近づき、完成の日どりもぼちぼち見えてきた頃、入居者を決めました。入居者の募集は、いつものように「この指止まれ」方式で行いました。当時はバブルの絶頂期で、都市部ではいたる所で古いアパートや家が壊され、高層マンションに建て替えられていました。高齢者や一人暮らしのおとしより達は、家賃の高騰や高齢という理由で住む場所を追われ、大勢のおとしよりが路頭に迷っていました。
頼んだ覚えもないのに近所の不動産屋に、小川議員が老人アパートをつくるらしいので行ってみたら、といわれてきたという人などが次々と現れ、六人の入居募集に六十四人もの応募があり、唖然とするありさまでした。このうちこ十人は男性でした。しかし、その人達には申し訳なかったのですが、もともと女性だけを考えていましたので、そのように説明し男性にはお引き取り願いました。
私としては、初めての試みでもあり絶対に失敗は許されないことなので、そのつもりで研究も準備も進めてきましたので、入居してもらう人には私の考えもよく説明し、共同生活を理解してもらえる人を第一に選びたいと考えていました。その点、女性は家事の経験もあり、男性に比べ環境に対する順応性も高く、他人ともよく解け合えると考え、今回は女性に限り、しかもいろんな角度から緊急度の高い人から入居してもらうことにしました。
入居に際しては、苦しい資金繰りで建設しましたので、入居者にそれぞれ三百万円の入居金を用意してもらうことにし、四人の方からいただきました。残りの二人については、私は議員として、これまでいろいろと苦労されている方たちを大勢見てきましたので、少しでもそうした方達の力になりたいという気持ちから、生活保護を受けている方にも入居してもらうことにしたため、入居金はいただくことはできませんでした。
実のところ、喉から手がでるほどお金が欲しかったのですが、信念として自分の気持ちを貫きました。生活保護を受けている二人には、市から家賃として契約している月額四万円を基準に、敷金・権利金として三カ月分十二万円がそれぞれ支給され、これを入居金とさせていただきました。また、それ以降は二年ごとに部屋の契約更新を行い、申請すればそのつど一カ月分の更新料が市から支給されています。
また、入居に際して「さくら」が入居者と交わす契約は、アパートやマンションの賃貸契約と同じようなごく普通のものですが、これからは六人で共同生活をする「ついの館館なるのですから、少しでも楽しく気持ちよく生活してもらえるよう、最低限度のルールを次のように決め、私と入居者全員の確認事項といたしました。
入居者との確認事項
一、自分のことは自分ですること。他の人にたよらない――自主独立の気持ちを忘れないように。
一、健康管理には充分注意すること――定期検診は必ず受けること。
一、部屋の管理は自分で責任をもつこと――掃除と整理整頓の励行。
(体調の悪いときにはへルパーを頼むことが出来る)
一、共同の場所――居間・キッチン・風呂場・廊下・玄関・ハウスの周りなどの管理清掃は、全員協力して行うこと。
一、食材の用意はオーナーが行う。朝食と昼食については、入居者がチーフ(あらかじめ選出)と協力してつくる。夕食は、オーナーもしくはボランティアがつくる。ただし、どちらも都合の悪いときはチーフと協力してみんなでつくる。(週四日は宅配食)
一、共同生活の意義を理解し、気になること・意見などを気楽に話し合ってわだかまりを残さないよう、オーナーを入れ全員で月二回ミーティングを行う。
そのほか、共同で使う日用雑貨品などは、原則としてオーナーが用意するが、オーナー不在時の緊急の出費などのためには、あらかじめ用意しておき、必要に応じてそれを使う。
およそ、以上のようなことを決めていますが、これらは毎日の生活のなかでつけ加えたり削ったりしながら、このようにまとまったものです。