あとがき

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一九九七年六月、母の十三回忌法要のため、姉兄妹で函館に行ってきました。祖母が昔流の願掛けお百度詣りの末に生まれたと言う母と、十四歳離れた弟・私たちの叔父もまた、七年前母の命日に亡くなりました。
「因縁だろうか。仲のよかった姉と弟が、同じ月の同じ日に亡くなるとは……」信心深い叔母は、よくそう言っては二人を懐かしんでいます。一人残ったその叔母もはや八十五歳になりました。
隣り合わせに並んだ二基の墓に、私たちはそれぞれの思いで手を合わせましたが、その時、ふっと私の頭の中を”生者必滅”の言葉がよぎりました。「さくら」が誕生して七年目の今年、よき仲間の一人Oさんが亡くなりました。他にも多くの大切な方々を見送ってきました。悲しい思い出でした。
そして十二年前、八年間の闘病の末逝ってしまった母の物言わぬ唇を指でなぞりながら、
「かあさん、楽になったね、よかったね……」と、後は言葉もなく働突した日のことがはっきりと頭に浮かんで来ました。

私が今回、体験記とも言えるこの記録をまとめるきっかけは、東峰書房の高橋さんの熱心なすすめに動かされてのことでしたが、同時に「さくら」の原点になった母への哀惜と悔恨、そして鎮魂の思いでもあったのです。
人は誰れでも幸せでありたいと願っています。まして歳老いてから「生きていてよかった」と実感をもってふりかえられる、そんな社会であってほしいと心から願わざるを得ません。
しかし、私たちの社会はすでに高齢化が到来し、近付く二千二十年には四人に一人が六十五歳以上になると統計が示しています。世界一、人類未踏の高齢化社会の日本で、私たちのこれからの道のりはたいへん険しいことが予見されています。
それぞれの人生を精いっぱい生き、老境に入ったときに待ちかまえているのが病気、孤独、そして、経済苦だとしたら、それはなんとむごく悲しいことでしょうか。でも人は、受身だけでなく、事態を鋭く見きわめ攻勢的にきりひらく智恵と勇気をもっていることに私は確信をもつのです。

小さな試みながら、グループハウス「さくら」にようやく光が当てられました。「共に生きる」入居者の立場に立ち、民主的に運営される施設が今こそ必要なのだと、私は叫びたいのです。住み慣れた街中の一隅に第二、第三の「さくら」が、いえ、日本全国に「さくら」が誕生することを私はこころから願ってやみません。

刊行にあたり東峰書房の高橋衛さん、装丁・題字やカットを快く引受けてくださった書家の森谷明仙さんのご協力、ご援助に対してこころからお礼を申し上げます。また、身内ですが、実姉の岩崎治美、夫の小川忠男には、構想段階からワープロ打ちまで、身近かな協力者として支援してもらいました。
そしてまた、これまで「さくら」を支えてくださった多くの方々にも、こころからお礼を申し上げる次第です。
ありがとうございました。

一九九八年一月
小川志津子

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